令和元年度 出陣ねぶた
紀朝雄[きのともお]の一首 千方[ちかた][ちゅう]

 草も気も 我が大君[おおきみ]の國なれば いづくか鬼の [すみか]なるべき

 天智天皇の御代[みよ]の伝説である。 藤原千方[ふじわらのちかた]という豪族がいた。 彼は、金鬼[きんき]風鬼[ふうき]水鬼[すいき]隠形鬼[おんぎょうき] という四鬼[よんき]を意のままに操ることができた。

 堅固[けんご]な体で矢をも通さない金鬼。 大風を吹かせ敵城を吹き破る風鬼。洪水を起こし陸地で敵を溺れさせる水鬼。その姿を隠し突然敵に襲いかかる隠形鬼。 四鬼の術はいずれも人の力では防ぎようがなく、千方の領する伊勢・伊賀両国の王化は難航を極めた。 こうした事態を受けて、天皇より千方討伐を命じられたのが、紀朝雄という人物である。 朝雄はかの地に赴くと、冒頭の和歌を一首読み、鬼たちに向けて送った。 「草も気もすべてこの国のものは天皇が治めているのだ。鬼の居場所などどこにあろうか。」 この歌を受けた四鬼は術を奪われ一目散に逃げ去った。 そして勢力を失った千方を、朝雄は見事討ち果たしたのである。

 新天皇陛下の御即位を奉祝し、新時代「令和」のこの国の安寧と繁栄を祈り願うものである。

解説/竹浪 比呂央