平成十九年度 出陣ねぶた
 
「 鬼 神 太 夫 」

 昔、鳴沢小屋敷[なるさわこやしき](青森県鰺ヶ沢町)に、一人の腕のよい刀鍛冶が住んでいた。 彼には器量のよい娘がいたが、跡とりがいなかった。 そこで、七日の間に十腰(十振)の刀を鍛えられる技量をもった者を娘婿とし、跡を継がせようとした。

 ある日、鬼神太夫という身なりの良い若者が訪ねてきた。 そして、作業中絶対に鍛冶場をのぞかないことを条件に、この難題に挑んだ。 ところが、不思議なことに何日たっても鍛冶場からは何の音もせず、食事をとっている気配もない。 心配になった刀鍛冶は、こっそりと中をのぞいてしまった。 するとそこには、おそろしい形相をした龍が口から火を吐き、刀を鍛えている姿があった。 驚いた刀鍛冶は、娘をこんな化け物にはやれぬと、でき上がった一腰の刀を抜きとり、鳴沢川に投げ捨ててしまった。

 約束の日の朝、何も知らない鬼神太夫は仕上げた刀を差しだした。 一腰、二腰…と数えていくが、十腰ない。鬼神太夫は落胆し、そのまま東へ姿を消したのであった。

 十腰内[とこしない]という地名は、この話が由来になっているという。

解説/竹浪 比呂夫