平成十一年度 出陣ねぶた
運行・跳人賞
文 殊 [梵珠山の由来より]

 津軽半島の脊梁[せきりょう]をなす津軽山地の南部に、標高四六八・四メートルの梵珠山[ぼんじゅさん]がある。 低い山ではあるが、西の岩木山に対し古くからの聖地として信仰されており、仏教にまつわる話も多く、その昔、道昭上人[どうしょうしょうにん]釈迦[しゃか]文殊[もんじゅ]普賢[ふげん]の三尊をこの山にまつったと言う話も残されている。 又、ふもとの「大釈迦[だいしゃか]」(南津軽郡浪岡町)という地名は、桓武天皇の時代に鬼門封じのために堂舎を建立し、釈迦像を安置したことに由来し、さらに「梵珠」の名は、文殊菩薩によるものと伝えられている。 文殊菩薩は、「三人よれば文殊の智恵」のことわざがあるように、智恵を[つかさど]る菩薩として親しまれている。 「般若経[はんにゃきょう]」・「維摩経[ゆいまきょう]」など多くの経典に登場し、又、釈迦如来[にょらい]の最も代表的な眷属[けんぞく]として尊崇されている。

 ねぶたは、百獣の王である獅子の手綱を取る于てん王を従えた、文殊菩薩の姿である。 この文殊の名をうけた梵珠山は、その山頂から岩木山や八甲田連峰、さらには青森湾や津軽半島全域、遠く権現崎[ごんげんざき]までの一大パノラマが開けている。 ブナ・ミズナラを主とした広葉樹林におおわれたこの山は、一九六九年(昭和四十四年)県民の森に指定され、種々の鳥獣、原生花園に恵まれた中で自然保護の精神を養う場として、県立自然ふれあいセンターが設立されるなど、現在も広く県民に親しまれている。

解説/竹浪 魁龍